
らないのかという考え、そういうものを積極的にといいましょうか、深く追求するといいましょうか、知識を集めて、あるいは勉強をして、いろいろの他の演劇のケースを見てやるというのはもう当たり前のことでございます。ただ単にチケットの売れる人気者、ジャニーズのだれかを呼んできて、いいかげんに芝居をさせたらいいというものではございません。 私どもが歌手芝居というものを江利チエミ、美空ひばり以後やり出しましたときに、演劇評論家や新聞記者たちに怒られました。これは演劇ではない。いわゆるただ切符が売れればいい、団体客のためだけのもので、演劇文化に何の寄与もしないんだ、こういうおしかりを受けて、歌手芝居などは劇評の対象にならない、こういうことを言われたことがございます。ただ、もちろんシェイクスピアと美空ひばりとを比べるというようなわけにはまいりませんので、美空ひばりのお芝居とショーを楽しむ層には、これが一番の最高のエンターテインメントであったわけでありまして、そういうものでコマ劇場は随分稼がせていただいたわけでございますけれども、さっき前田さんも、そういう演劇というのが一筋縄ではいかない、1つのサンプルがくくれないものだとおっしゃいました。確かにそういうことでございまして、大小にかかわらず、演劇というものは一口には言えないものでございますし、どうしたら売れるのか、どうしたら集客を約束されるのかということは、スター主義に偏ると多少票は読めるかもわかりませんが、なかなか難しいものでございます。 続きましては、例えば作品に対して知識がある。これは作品の理解と裏表なんですね。シェイクスピアの「ハムレット」を自分がプロデュースしたら、あのプロデューサーがやった「ハムレット」とは違う表現の「ハムレット」ができるんだ。こういうふうに確信を持てば、「ハムレット」をプロデュースするということにすごいエネルギーといいましょうか、パワーといいましょうか、情熱ができるかと思います。あるいは余りにも前衛的な演出が最近は殺風景になっているから、逆に原点に戻って、お金をふんだんにかけてコスチューム・プレーをして、完壁な「ハムレット」をやったらどうかというようなポリシーのあるプロデューサーがやる「ハムレット」、いろいろの形があろうかと思います。 3番目の予算ということに関しましては、やはり潤沢に予算があり余るということはまずこの世界にございませんので、やはり最少の支出で最大の効果を上げる、経済効率をよくするということをできるかできないか。もちろん、なかなか至難のわざでございます。私などはもうすぐ予算枠をオーバーしそうになって、いつもあたふたとしているわけでございますけれども、お金というのは、ギャランティー1つ交渉するにしても、極端な話、
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